石王丸公認会計士事務所

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知っておくと役に立つ会計や監査に関する情報を随時掲載しています。

No.56 リモート棚卸立会…3月末の『ミッション・インポッシブル』?

2021-01-12
ターゲットが大事なモノを数えているところをドローンで撮影する。
…映画『ミッション・インポッシブル』のワンシーンのようですが、この3月末、こんな光景があなたの会社で繰り広げられるかもしれません。

日本公認会計士協会より、新型感染症拡大を踏まえた対応として、リモートワーク対応第2号「リモート棚卸立会の留意事項」という資料が公表されています。
財務諸表監査では、通常、「棚卸立会」を行います。通常の「棚卸立会」とは、会社が行う実地棚卸の現場に監査人が赴いて、棚卸の実施状況、棚卸資産の実在性や状態などを確かめることを言います。
一方、公表された資料では、会社が行う実地棚卸の状況をビデオカメラやドローンで撮影し、監査人に実況を送信するといった「リモート棚卸立会」が取り上げられています。
映画さながらに(?)、
「スマホの位置情報を利用して、棚卸の映像の送信元が、監査人が対象として選んだ場所かを確かめる」
などといった、様々な留意事項が説明されています。

一般用語の「立ち会う」という言葉は、「物事の成り行きや結果を見守るために”その場にいる”」という意味です。
感染症拡大が続く中、棚卸に実際に立会うことができないケースがあるのは仕方ありませんが、 監査上の「棚卸立会」も、実際に現場に行って直接様子を見たり担当者と話したりすることそのものにも、大きな意義があります。
通常の「棚卸立会」を行える状況が、少しでも早く訪れるとよいですね。


【某社経理部長のコメント】
「ドローン操縦は俺に任せろ!密を避けて河原で特訓だ!」




No.55 『その他の記載内容』はどこか?

2020-12-07
2020年11月に監査基準の改訂が行われました。改訂により、2022年3月決算に係る財務諸表の監査から、監査報告書に新しい区分が設けられます。
新しい区分は…、その名も『その他の記載内容』です!!
???
何を指すのかわかりにくいですが、『その他の記載内容』は、『監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容』のことを言います。
有価証券報告書を例にすると、

 第一部 企業情報
  第1 企業の概況
  第2 事業の状況
   …
  第5 経理の状況
    連結財務諸表・財務諸表 ←監査対象はココ!!
   …
 監査報告書

青色以外は『その他の記載内容』なので、有価証券報告書のうちのかなりのページ数は『その他の記載内容』ということになります。
改訂により、以下が明確化されています。
・監査人は、その他の記載内容と財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうかについて検討する
・監査人は、財務諸表や監査の過程で得た知識に関連しないその他の記載内容についても、重要な誤りの兆候に注意を払う
また、監査報告書の『その他の記載内容』の区分に、その他の記載内容に対して監査人は意見を表明するものではない旨などを記載することになります。


【某社経理部長のコメント】
「前半部分も一生懸命書いてるのに、『その他』なのかぁ。」




No.54 『脱ハンコ』の波紋はどこまで?

2020-10-31
『脱ハンコ』論が世間をにぎわせています。
重要な書類にハンコはつきものですが、ご多分にもれず監査報告書でもハンコが用いられており、監査人は監査報告書に自署してハンコを押すことになっています。
公認会計士法では、
「監査法人が会社その他の者の財務書類について証明をする場合には、当該証明に係る業務を執行した社員は、当該証明書にその資格を表示して自署し、かつ、自己の印を押さなければならない」
と規定されているほか、財務諸表等の監査証明に関する内閣府令にも同様の定めがあります。 会社法においては会計監査報告への自署・押印に関する定めはありませんが、公認会計士法を踏まえ、監査報告書に自署・押印し、監査報告書と計算書類を一緒に袋綴じする実務が行われてきました。
しかし、2020年3月決算では、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、この点について柔軟な対応がとられたようです。
2020年5月には日本公認会計士協会から「監査業務における署名・押印に関する実務対応について」という文書が公表されており、
・監査対象会社に対して、記名+㊞を記載した監査報告書を改竄不能な電子媒体にして電子メール等の方法で提出する
・計算書類と監査報告書のファイルを PDF で結合した上で、修正不能な設定とする
などの実務対応が挙げられています。

『脱ハンコ』の波は監査報告書にも押し寄せてくるのか?今後の動向に注目です。


【某社経理部長のコメント】
「卑弥呼の時代にもハンコがあったんだから、すぐにはなくならないんじゃない?金印ならどんどん押したい!」




No.53 四半期財務諸表における有価証券の減損処理

2020-10-07
日本郵政㈱が2021年3月期第2四半期(2020年9月)の個別決算において、
 関係会社株式評価損 約3兆円(!)
を計上すると発表しました。
保有する㈱ゆうちょ銀行の株価が著しく下落したための減損処理による評価損です。
日本郵政㈱の場合、㈱ゆうちょ銀行は連結子会社なので連結決算上の影響はありませんが、 配当は個別決算に基づいて行うことから、巨額の評価損計上により今後の配当原資がどうなるのか、注目されています。
そこで今回は、四半期財務諸表における有価証券の減損処理についてまとめました。

四半期財務諸表における有価証券の減損処理としては、
 ① 四半期切放法
 ② 四半期洗替法
の選択適用が認められます。(原則として継続適用。)
四半期洗替法による場合、評価損は翌四半期会計期間の期首に戻し入れ、その後は、戻し入れた後の帳簿価額を基準に、時価等と比較して減損の要否を判断します。 つまり、四半期洗替法による場合、四半期末で減損処理を行っても、株価次第で年度末までに戻入れが発生する可能性があります。

【事例】㈱ホテルニューグランド
 2019年11月期第3四半期…投資有価証券評価損 40,485千円(減損処理による評価損)
 2019年11月期(通期)…投資有価証券評価損 ゼロ(株価回復により第3四半期の評価損は戻入れ)

日本郵政㈱も洗替法を採用しているので、年度末までに㈱ゆうちょ銀行の株価が上がった場合には、関係会社株式評価損の額が少なくなる可能性も考えられます。 仮に減損不要な水準まで株価が大きく回復すれば、評価損を全額戻し入れる可能性も絶対ないとは言えないわけです。
下半期の㈱ゆうちょ銀行の株価の動向が気になりますね。

なお、四半期財務諸表における固定資産の減損については、そもそも減損の存在が相当程度確実な場合に限って行われることなどから、年度末に減損損失を戻し入れることは認められません。


【某社経理部長のコメント】
「うちの会社にも、できることなら戻し入れたい損失がたくさんあるぞ!」




No.52 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ⑥

2020-09-24
監査上の主要な検討事項(KAM)の早期適用事例を分析して気付いた点の一つとして、企業による情報開示とKAMの記述との
 「バランス
の在り方が挙げられます。
事例によっては、企業による情報開示(有価証券報告書における記述情報や注記)よりもKAMの記述のほうがかなり詳細になっていて、ややアンバランスな印象を受けるものがありました。

平成30年「監査基準の改訂に関する意見書」には、
監査人が「監査上の主要な検討事項」を記載するに当たり、企業に関する未公表の情報を含める必要があると判断した場合には、経営者に追加の情報開示を促すとともに、必要に応じて監査役等と協議を行うことが適切である。
この際、企業に関する情報の開示に責任を有する経営者には、監査人からの要請に積極的に対応することが期待される。また、取締役の職務の執行を監査する責任を有する監査役等には、経営者に追加の開示を促す役割を果たすことが期待される。
と示されています。
KAMとして何を書くかは、最終的には監査人の判断によります。ただし、事前に経営者・監査役等と監査人との間での十分な協議が不可欠であるとともに、企業内でも有価証券報告書における情報開示方針について一層の検討が求められそうです。そのためには、経理部門だけでなく企業グループ内の各部署や子会社などとの連携も必要と考えられます。
なお、2020年3月決算においてKAMを早期適用していない企業でも、有価証券報告書の「コーポレートガバナンスの状況等」において、KAMの本適用に備え監査人と連携し検討を行っているなどの旨を記載する事例(㈱リコー、㈱明電舎など)もあり、本適用に向けた準備が進められている様子がうかがえます。

【某社経理部長のコメント】
「え~っ!各部署の部長にも説明しておかないと!…誰が説明するの!?」
(経理部長が適任です)




No.51 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ⑤

2020-09-09
「監査上の主要な検討事項(KAM)」は、連結財務諸表の監査報告書だけでなく、個別財務諸表の監査報告書にも記載されます。 個別のKAMの記載パターンをまとめてみました。

【パターン①】
個別のKAMが連結のKAMと同一の内容で、個別の監査報告書ではその旨のみを記載し内容の記載は省略する
 (三谷産業㈱など)
個別財務諸表は連結財務諸表を構成するので、個別のKAMと連結のKAMは共通することも多いはずです。 連結の監査報告書で同一内容のKAMが記載されている場合には、個別の監査報告書ではその旨を記載し、内容の記載は省略することが認められています。

【パターン②】
個別のKAMが連結のKAMと同一又は類似の内容で、個別の監査報告書にも内容を記載する

個別のKAMが連結のKAMと同一又は類似の内容で、個別の監査報告書でも内容を詳細に記載する事例も見られます(東急㈱など)。また、連結のKAMとして「のれんの評価」を記載した場合、個別のKAMとして、そののれんに紐づく「関係会社株式の評価」を記載する事例が目立ちます(大陽日酸㈱など)。

【パターン③】
個別のKAMとして連結のKAMと異なる内容を記載する
 (マルハニチロ(株)など)
KAMは相対的な重要性を考慮して決定されるので、個別の監査で相対的な重要性が高いとしてKAMに選定された事項でも、連結の監査では相対的な重要性が低くKAMに選定されないこともあります。

【パターン④】
個別のKAMはないと判断する
 (㈱みずほフィナンシャルグループなど)
純粋持株会社では、個別のKAMはないと判断し、その旨を記載する事例も多く見られました。
事業活動を行う企業ではKAMがないという状況は想定されにくいですが、純粋持株会社の場合には実質的な事業活動が極めて限定されているので、個別のKAMはないとの判断に至ることもあるようです。

個別と連結のKAMを見比べてみるだけでも、その企業と企業グループの関係性が垣間見えますね。

【某社経理部長のコメント】
「うちの会社は個別だけだから、悩む必要なし!」




No.50 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ④

2020-09-03
「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例で、固定資産の減損やのれんの評価以外にKAMとして多く選定されていた事項としては、以下が挙げられます。

引当金の計上・評価:㈱デンソー(製品保証引当金)、㈱りそなホールディングス(貸倒引当金)など
繰延税金資産の回収可能性:㈱岡三証券グループ など
収益認識:富士通㈱(進捗度に基づく売上収益)、㈱メンバーズ(売上の期間帰属)など

KAMは次のようなプロセスで決定されます。
①監査の過程で監査役等とコミュニケーションを行った事項の中から
  ↓
②監査を実施する上で、監査人が特に注意を払った事項を決定する
  ↓
③その中から更に、当年度の監査において職業的専門家として特に重要であると判断した事項をKAMとして決定する

監査は、財務諸表に重要な虚偽表示が生じる可能性が高い事項について重点的に監査の人員や時間を充てる「リスク・アプローチ」によって行われており、そうした重点事項について監査役等とコミュニケーションを行うことが求められています。その重点事項を母集団として、その中でも特に重要であると判断して絞り込んだ事項がKAMとして決定されているのです。
KAMとして選定された事項は、いずれも選び抜かれたツワモノ(?)ということですね。

なお、収益認識に関しては、収益認識会計基準が2021年4月1日以後開始する年度の期首から本適用となります。当事務所では、収益認識会計基準対応のためのセミナーやサポート業務も行っています。

【某社経理部長のコメント】
「宣伝は不要!」




No.49 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ③

2020-08-22
「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例を分析したところ、KAMとして最も多く選定されていた事項は、
固定資産の減損 や のれんの評価
でした。
減損会計の適用にあたっては、将来キャッシュ・フローの見積りや割引率などについて不確実性があり、経営者による判断が重要な影響を及ぼします。また、金額的にも財務諸表に対して大きなインパクトを与えることから、KAMとして選定されることが多いのもうなずけます。
特に2020年3月決算では、新型コロナウィルスの感染拡大が生じていたことから、これによる影響にも触れて記載する事例が多数ありました(住友商事㈱など)。また、IFRSではのれんを償却しないため、のれんの評価(のれんの減損テスト)がKAMに選定されている企業が目立ちます(㈱三菱ケミカルホールディングスなど)。
今後の経済動向が不透明なことを踏まえると、固定資産の減損やのれんの評価は、多くの企業において、会計上も監査上も一層重要なテーマの一つになります。KAMが本適用となる2021年3月決算も、これらの事項がKAMに選定される事例が多い可能性が高そうです。

【某社経理部長のコメント】
「心配事が多くて、髪の毛もさらに減損しそうだよ。」




No.48 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ②

2020-08-05
監査人は、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から特に注意を払った事項を決定した上で、その中からさらに、当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項を「監査上の主要な検討事項(KAM)」として決定します。
つまり、監査役等と協議した事項の中での相対的な重要性によってKAMが決定されるため、記載されるKAMが1個だけとは限りません。
早期適用事例について、記載されたKAMの個数を調べたところ、連結財務諸表に対する監査報告書におけるKAMの個数の平均は約2.2個でした。
1つのKAMの中に2つ以上の論点が含まれているケースもあるので、平均値はあくまでも参考ですが、2~3個記載される事例が多いようです。
ちなみに、調査した中でKAMの個数が多かったのは第一生命ホールディングス㈱(5個)・三井不動産㈱(4個)などで、特有の会計処理がある業種や、大規模で複雑な取引が行われる業種などでは、KAMの個数が多くなる傾向があることがわかります。

KAMの記載量には幅があり、コンパクトにまとめていた事例がある一方で、1つのKAMについて1ページを超えて記載する事例(三井物産㈱など)もありました。また、監査役とコミュニケーションを行った重要な事項を一覧表で示したうえで、その中からKAMを選定したプロセスがわかるように記載している事例(㈱AOKIホールディングス)などもあります。
従来、一般の方が監査報告書をじっくり読むことはほとんどなかったと思われますが、今後は、いろいろな会社の監査報告書を読み比べてみるのも面白いでしょう。

【某社経理部長のコメント】
「KAMの平均個数を調べるなんて、よっぽどヒマだったのかなぁ。」




No.47 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ①

2020-07-31
監査報告書における「監査上の主要な検討事項(KAM:Key Audit Matters)」の記載が、2021年3月決算の監査から適用となります。
(※適用対象は、金融商品取引法に基づいて開示を行っている企業(非上場企業のうち資本金5億円未満又は売上高10億円未満かつ負債総額200億円未満の企業は除く。)の財務諸表の監査報告書です。)
ただし、早期適用も可能とされており、特に東証一部上場企業については、できるだけ2020年3月決算の監査から早期適用することが推奨されていました。
興味本位で調べたところ、「監査上の主要な検討事項(KAM)」を早期適用した事例として把握できた会社の数は、43社でした(12月末決算のキヤノン㈱含む)。

小売:㈱AOKIホールディングス、綿半ホールディングス㈱ など
卸売:三井物産㈱、住友商事㈱ など
化学・医薬品:大陽日酸㈱、武田薬品工業㈱ など
機械・電気:三菱電機㈱、富士通㈱ など
自動車:トヨタ自動車㈱、本田技研工業㈱ など
金融・証券・保険:㈱三菱UFJフィナンシャル・グループ、㈱大和証券グループ本社、第一生命ホールディングス㈱ など
不動産:野村不動産ホールディングス㈱、三井不動産㈱ など
通信・サービス:ソフトバンク㈱、綜合警備保障㈱ など

緊急事態宣言が出され社会全体が混乱していたにも関わらず、「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例は40社以上ありました。リモートワークが駆使されたものと考えられます。
今後数回にわたって、KAMの早期適用事例を紹介します。

【某社経理部長のコメント】
「うちの会社名は載っている…わけないか。」



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トピックス No.41~46
トピックス No.31~40
トピックス No.21~30
トピックス No.11~20
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