石王丸公認会計士事務所

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杭打ちで経営分析 ~EPS(一株当たり利益)で見る旭化成~

(2015年11月作成)

2015年10月に発覚したマンションの杭打ちデータ流用問題は、当事者企業の業績にどう影響するのでしょうか。
今回は、杭工事を担当した会社が属する旭化成グループについて、一株当たり利益(EPS)を見ていきます。

旭化成㈱の1株当たり利益(連結。以下同じ。)は、過去10年間、以下のように推移しています。

ここ数年間は順調に推移しており、直近2年は過年度比で高い水準となっています。
2015年度もこの流れに乗って、さらに上を目指そうとしていたことでしょう。杭打ち問題が勃発したのはそんなときでした。

上場会社の多くは期末決算の発表時に次年度の業績予想を公表しています。
旭化成も2014年度(2015年3月期)の決算発表時に2015年度(2016年3月期)の業績予想を出しています。
1株当たり利益についても2015年度の予想が出ています。
その2015年度の予想がどうなっているのか、そしてそれがどれほどあてになるのかを見てみます。
以下は過去10年分のEPSの予想値と実績値の推移です。

基本的に、実績値と予想値の間には大きなかい離はありません。
たった一度だけ実績が予想を置きく下回った年度がありますが、それはリーマンショックが起きた年度でした。
この会社は、そんなことでもない限り、予想通りの結果を出してきたわけです。
そう考えると、2015年度のEPSは、すでに公表されている予想値付近に収まる可能性が高いといえます。

この予想値というのは随時更新されており、現時点で会社が公表している最新(第2四半期決算公表時)の業績予想によれば、2015年度のEPSは当初予想よりも若干下回り、以下のようになっています。

下方修正にはなりましたが、EPSは依然として高いレベルを維持しています。
ただし、この業績予想の修正値には、杭打ち問題に関する対策費用等が織り込まれていません。
現時点で合理的に見積もることが困難であるからだと、会社は説明しています。
その後新規のくい打ち工事を受注していない影響については織り込んでいるそうですが、それも全体から見ると微々たるものだそうです。

つまり、現在公表されている業績予想は、杭打ち問題に関して最低限の影響しか織り込んでいない数字であって、今後の動向次第ではさらなる下方修正もあるという数字です。

果たしてEPSはもう下がらないのか、あるいは下がるのか、下がるとしたら過去10年と比べてどのレベルまで下がるのか、まずはそういった点から見極めたいところです。

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EPSについては、
Kindle本『株を買う前に見るべき2つの財務数値: EPSはお宝の分け前』
で詳しく解説しています。
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アイスクリームで経営分析 ~既存店売上高で見るB-R サーティワンアイスクリーム~

(2015年11月作成)

世の中には楽観的な人と悲観的な人がいます。

先日、「サーティワンアイスが40年ぶりに赤字か・・・」というニュースを目にしました。
大半の人は「サーティワンはかなり業績がよくないようだ」と受け止めたでしょう。
しかし、一方でこんなふうにも考えられます。「40年もの間、よく赤字にならなかったな」という見方です。

早速、直近の決算短信を見てみましょう。

サーティワンアイスの会社は、正式にはB-R サーティワン アイスクリーム株式会社といいます。
決算期は12月です。
現時点で入手できる最新の決算情報は、2015年12月期の第3四半期末(2015年9月)のものです。

それによると、第3四半期累計の実績は最終赤字。
2015年12月期の通期では黒字の予想ですが、当期純利益はわずか10百万円です。

やはりサーティワンのアイスは売れていないのでしょうか。
まずは売上高について過去の推移を確認してみます。

グラフの形から判断する限り、売上高はここ1、2年、頭打ちになってきています。
しかし長期的に見る限り、深刻な落ち込みではありません。
おそらく2014年は消費税率の引き上げによる影響でしょう。
これまでにない落ち込みですが、その影響も2015年には下げ止まる予想となっています。
以上が全店ベースの売上高の状況です。

サーティワンのようなチェーン店では、全店ベースの売上高を見るにあたって注意すべき点があります。
今まで店を出していなかった地域に新規出店すれば、売上高を容易に増加させることができることです。

実際、サーティワンの店舗数は年々増加してきています。
客足が遠のいても、新しい店を出せば、その分のプラスアルファは売上高の増加に寄与します。
特に開店直後の一定期間は、目新しいということだけでお客さんが集中してやってきます。

この新店効果による売上高の増加を除いてあげないと、客足が伸びているかどうかはわからないのです。

チェーン店形態の会社では、そうしたことを判断するための材料として、既存店の売上情報を開示していることが多いです。
サーティワンでも、既存店の売上、客数、客単価について前年比の数値(パーセント)を開示しています。

既存店とはどのような店を指すのかについては、特に決まりはありません。
各社がそれぞれ自主的に定義する概念です。
サーティワンでは「25か月前より以前に開店した店舗」を既存店としています。

当然のことながら、既存店に含まれる店舗は毎年変わってきます。
既存店データは毎年開示されていますが、そのデータを構成する店舗は毎年変動します。
したがって、既存店データというのは、過年度にわたって連続性のあるデータではありません。
しかし以下では、あえて既存店の客数データを連続的につなげてみました。

上のグラフは、各年度の既存店の客数の前年比(%)を拾い出し、2014年を100として、順に算定した数値を示したものです。

たとえば、2014年の客数前年比が93%とすると、100÷0.93=107で、2013年を107とします。
そして、2012年の値を求めるには、107を2013年の客数前年比で割り返します。

そうやって求められた数値に年度の連続性はないのですが、それをあえて連続的なグラフにすると、上のグラフになるわけです。
そして、そのグラフによると、既存店の客足が遠のいていることがわかります。

グラフに注釈をつけると、客足が遠のいた背景もわかります。

2008年はリーマンショックに至る過程での出来事、2011年から2012年にかけては東日本大震災の後遺症、2014年は消費税増税です。

逆風をもろに受けているような状態で、これでは客足をつなぎとめるのは至難の業だったはずです。
新店効果でこれを埋め合わせたというのなら、それはそれで何とかうまく切り抜けたといえないでしょうか。
現状はそんなふうに見えます。

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