石王丸公認会計士事務所

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会計情報 > トピックス/バックナンバー No.47~52

知っておくと役に立つ会計や監査に関する情報を随時掲載しています。

No.52 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ⑥

2020-09-24
監査上の主要な検討事項(KAM)の早期適用事例を分析して気付いた点の一つとして、企業による情報開示とKAMの記述との
 「バランス
の在り方が挙げられます。
事例によっては、企業による情報開示(有価証券報告書における記述情報や注記)よりもKAMの記述のほうがかなり詳細になっていて、ややアンバランスな印象を受けるものがありました。

平成30年「監査基準の改訂に関する意見書」には、
監査人が「監査上の主要な検討事項」を記載するに当たり、企業に関する未公表の情報を含める必要があると判断した場合には、経営者に追加の情報開示を促すとともに、必要に応じて監査役等と協議を行うことが適切である。
この際、企業に関する情報の開示に責任を有する経営者には、監査人からの要請に積極的に対応することが期待される。また、取締役の職務の執行を監査する責任を有する監査役等には、経営者に追加の開示を促す役割を果たすことが期待される。
と示されています。
KAMとして何を書くかは、最終的には監査人の判断によります。ただし、事前に経営者・監査役等と監査人との間での十分な協議が不可欠であるとともに、企業内でも有価証券報告書における情報開示方針について一層の検討が求められそうです。そのためには、経理部門だけでなく企業グループ内の各部署や子会社などとの連携も必要と考えられます。
なお、2020年3月決算においてKAMを早期適用していない企業でも、有価証券報告書の「コーポレートガバナンスの状況等」において、KAMの本適用に備え監査人と連携し検討を行っているなどの旨を記載する事例(㈱リコー、㈱明電舎など)もあり、本適用に向けた準備が進められている様子がうかがえます。

【某社経理部長のコメント】
「え~っ!各部署の部長にも説明しておかないと!…誰が説明するの!?」
(経理部長が適任です)




No.51 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ⑤

2020-09-09
「監査上の主要な検討事項(KAM)」は、連結財務諸表の監査報告書だけでなく、個別財務諸表の監査報告書にも記載されます。 個別のKAMの記載パターンをまとめてみました。

【パターン①】
個別のKAMが連結のKAMと同一の内容で、個別の監査報告書ではその旨のみを記載し内容の記載は省略する
 (三谷産業㈱など)
個別財務諸表は連結財務諸表を構成するので、個別のKAMと連結のKAMは共通することも多いはずです。 連結の監査報告書で同一内容のKAMが記載されている場合には、個別の監査報告書ではその旨を記載し、内容の記載は省略することが認められています。

【パターン②】
個別のKAMが連結のKAMと同一又は類似の内容で、個別の監査報告書にも内容を記載する

個別のKAMが連結のKAMと同一又は類似の内容で、個別の監査報告書でも内容を詳細に記載する事例も見られます(東急㈱など)。また、連結のKAMとして「のれんの評価」を記載した場合、個別のKAMとして、そののれんに紐づく「関係会社株式の評価」を記載する事例が目立ちます(大陽日酸㈱など)。

【パターン③】
個別のKAMとして連結のKAMと異なる内容を記載する
 (マルハニチロ(株)など)
KAMは相対的な重要性を考慮して決定されるので、個別の監査で相対的な重要性が高いとしてKAMに選定された事項でも、連結の監査では相対的な重要性が低くKAMに選定されないこともあります。

【パターン④】
個別のKAMはないと判断する
 (㈱みずほフィナンシャルグループなど)
純粋持株会社では、個別のKAMはないと判断し、その旨を記載する事例も多く見られました。
事業活動を行う企業ではKAMがないという状況は想定されにくいですが、純粋持株会社の場合には実質的な事業活動が極めて限定されているので、個別のKAMはないとの判断に至ることもあるようです。

個別と連結のKAMを見比べてみるだけでも、その企業と企業グループの関係性が垣間見えますね。

【某社経理部長のコメント】
「うちの会社は個別だけだから、悩む必要なし!」




No.50 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ④

2020-09-03
「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例で、固定資産の減損やのれんの評価以外にKAMとして多く選定されていた事項としては、以下が挙げられます。

引当金の計上・評価:㈱デンソー(製品保証引当金)、㈱りそなホールディングス(貸倒引当金)など
繰延税金資産の回収可能性:㈱岡三証券グループ など
収益認識:富士通㈱(進捗度に基づく売上収益)、㈱メンバーズ(売上の期間帰属)など

KAMは次のようなプロセスで決定されます。
①監査の過程で監査役等とコミュニケーションを行った事項の中から
  ↓
②監査を実施する上で、監査人が特に注意を払った事項を決定する
  ↓
③その中から更に、当年度の監査において職業的専門家として特に重要であると判断した事項をKAMとして決定する

監査は、財務諸表に重要な虚偽表示が生じる可能性が高い事項について重点的に監査の人員や時間を充てる「リスク・アプローチ」によって行われており、そうした重点事項について監査役等とコミュニケーションを行うことが求められています。その重点事項を母集団として、その中でも特に重要であると判断して絞り込んだ事項がKAMとして決定されているのです。
KAMとして選定された事項は、いずれも選び抜かれたツワモノ(?)ということですね。

なお、収益認識に関しては、収益認識会計基準が2021年4月1日以後開始する年度の期首から本適用となります。当事務所では、収益認識会計基準対応のためのセミナーやサポート業務も行っています。

【某社経理部長のコメント】
「宣伝は不要!」




No.49 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ③

2020-08-22
「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例を分析したところ、KAMとして最も多く選定されていた事項は、
固定資産の減損 や のれんの評価
でした。
減損会計の適用にあたっては、将来キャッシュ・フローの見積りや割引率などについて不確実性があり、経営者による判断が重要な影響を及ぼします。また、金額的にも財務諸表に対して大きなインパクトを与えることから、KAMとして選定されることが多いのもうなずけます。
特に2020年3月決算では、新型コロナウィルスの感染拡大が生じていたことから、これによる影響にも触れて記載する事例が多数ありました(住友商事㈱など)。また、IFRSではのれんを償却しないため、のれんの評価(のれんの減損テスト)がKAMに選定されている企業が目立ちます(㈱三菱ケミカルホールディングスなど)。
今後の経済動向が不透明なことを踏まえると、固定資産の減損やのれんの評価は、多くの企業において、会計上も監査上も一層重要なテーマの一つになります。KAMが本適用となる2021年3月決算も、これらの事項がKAMに選定される事例が多い可能性が高そうです。

【某社経理部長のコメント】
「心配事が多くて、髪の毛もさらに減損しそうだよ。」




No.48 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ②

2020-08-05
監査人は、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から特に注意を払った事項を決定した上で、その中からさらに、当年度の財務諸表の監査において、職業的専門家として特に重要であると判断した事項を「監査上の主要な検討事項(KAM)」として決定します。
つまり、監査役等と協議した事項の中での相対的な重要性によってKAMが決定されるため、記載されるKAMが1個だけとは限りません。
早期適用事例について、記載されたKAMの個数を調べたところ、連結財務諸表に対する監査報告書におけるKAMの個数の平均は約2.2個でした。
1つのKAMの中に2つ以上の論点が含まれているケースもあるので、平均値はあくまでも参考ですが、2~3個記載される事例が多いようです。
ちなみに、調査した中でKAMの個数が多かったのは第一生命ホールディングス㈱(5個)・三井不動産㈱(4個)などで、特有の会計処理がある業種や、大規模で複雑な取引が行われる業種などでは、KAMの個数が多くなる傾向があることがわかります。

KAMの記載量には幅があり、コンパクトにまとめていた事例がある一方で、1つのKAMについて1ページを超えて記載する事例(三井物産㈱など)もありました。また、監査役とコミュニケーションを行った重要な事項を一覧表で示したうえで、その中からKAMを選定したプロセスがわかるように記載している事例(㈱AOKIホールディングス)などもあります。
従来、一般の方が監査報告書をじっくり読むことはほとんどなかったと思われますが、今後は、いろいろな会社の監査報告書を読み比べてみるのも面白いでしょう。

【某社経理部長のコメント】
「KAMの平均個数を調べるなんて、よっぽどヒマだったのかなぁ。」




No.47 「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例 ①

2020-07-31
監査報告書における「監査上の主要な検討事項(KAM:Key Audit Matters)」の記載が、2021年3月決算の監査から適用となります。
(※適用対象は、金融商品取引法に基づいて開示を行っている企業(非上場企業のうち資本金5億円未満又は売上高10億円未満かつ負債総額200億円未満の企業は除く。)の財務諸表の監査報告書です。)
ただし、早期適用も可能とされており、特に東証一部上場企業については、できるだけ2020年3月決算の監査から早期適用することが推奨されていました。
興味本位で調べたところ、「監査上の主要な検討事項(KAM)」を早期適用した事例として把握できた会社の数は、43社でした(12月末決算のキヤノン㈱含む)。

小売:㈱AOKIホールディングス、綿半ホールディングス㈱ など
卸売:三井物産㈱、住友商事㈱ など
化学・医薬品:大陽日酸㈱、武田薬品工業㈱ など
機械・電気:三菱電機㈱、富士通㈱ など
自動車:トヨタ自動車㈱、本田技研工業㈱ など
金融・証券・保険:㈱三菱UFJフィナンシャル・グループ、㈱大和証券グループ本社、第一生命ホールディングス㈱ など
不動産:野村不動産ホールディングス㈱、三井不動産㈱ など
通信・サービス:ソフトバンク㈱、綜合警備保障㈱ など

緊急事態宣言が出され社会全体が混乱していたにも関わらず、「監査上の主要な検討事項(KAM)」の早期適用事例は40社以上ありました。リモートワークが駆使されたものと考えられます。
今後数回にわたって、KAMの早期適用事例を紹介します。

【某社経理部長のコメント】
「うちの会社名は載っている…わけないか。」



これ以外のバックナンバーはこちらです。
トピックス No.41~46
トピックス No.31~40
トピックス No.21~30
トピックス No.11~20
トピックス No.1~10

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