連結子会社への外貨建貸付金に係る為替差益はなぜ消去しないか
2022年後半以降、ドル円の為替レートが次のように推移しています。
144.75(2022年9月30日)
131.11(2022年12月30日)
132.79(2023年3月31日)
144.32(2023年6月30日)
147.82(2023年9月15日)
(Yahooファイナンスより)
3月決算企業の2023年1Qから円安方向への動きが顕著になっており、適時開示で為替差益の発生を発表している企業が多くなっているようです。
そうした企業の中に、連結子会社への外貨建貸付金に係る為替差益を計上しているというケースが時折みられます。親会社が海外子会社に資金を貸し付けているケースでは、親会社個別決算で外貨建貸付金に係る為替差益が計上されるので、連結決算でもそれがそのまま残ります。特に珍しいことでもなく、当たり前の会計処理です。
ところが、2年ほど前に表題のような質問をいただいたことがあり、いざ質問されてみると、これがなかなか回答が難しいと気がつきました。
連結決算上、子会社への貸付金は子会社の借入金と消去されるにもかかわらず、そこから発生した為替差益は消さなくてもよいのかというのが、質問者の疑問でした。
実際のところ、いまだにうまい説明は見つかっていませんが、しいて言えば、この取引に関する為替リスクは、親会社が貸付のための外貨を取得した時点で負ったものであって、為替差益部分は外部取引から発生したということでしょうか。親子間の貸付・借入は連結上の内部取引ですが、為替リスクはそのとき発生したわけではないので、消去の対象にならないという説明です。
連結グループ全体で考えた場合、親会社が子会社に送金した外貨は、子会社では資産に計上されており、連結決算上も資産として計上されます。必ずしも現預金の姿ではないにしても、外貨建資産(現地通貨建て)であれば為替リスクを負っています。見合いの親からの借入金とセットで考えれば為替リスクは中和されますが、その借入金は内部取引なので消去されており、当該外貨建資産の為替リスクは消えていません。連結上、為替差益が消去されないのは、そのことを表しているといえます。
某社経理部長のコメント
子会社が親からもらった外貨を全部使ってしまって親に返せない、すなわち、親から見たときに貸付金の回収可能性が著しく低下した場合はどう考えたらいいのかね?