【3分で読める】内部統制報告制度/改正の概要②
令和5年4月、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」・「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」が改正されました。
今回の改正点は大きく分けると次の3つです。
- 内部統制の基本的枠組みに関する改正
- 財務報告に係る内部統制の評価及び報告に関する改正
- 財務報告に係る内部統制の監査に関する改正
本記事は上記の 2.財務報告に係る内部統制の評価及び報告に関する改正 の概要をまとめます。
(1. 内部統制の基本的枠組みに関する改正 の概要は >>> こちら)
財務報告に係る内部統制の評価及び報告に関する改正の概要
① 内部統制の評価範囲の決定に際しての留意点を明示
評価範囲の決定についての基本的な考え方に変更はありません。
ただし、評価範囲の決定にあたって、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性を適切に考慮すべきことを強調するため、次のような改正が行われています。
従前の「実施基準」では、評価対象とする重要な事業拠点や業務プロセスを選定するための指標として、「売上高等のおおむね3分の2」や「売上、売掛金及び棚卸資産の3勘定」が示されてきました。
改正により、これらはあくまでも”例示”であり、これらの指標を機械的に適用すべきでないことが強調されています。
改正後も上記の例示は残されているものの、改正基準の前文では「段階的な削除を含む取扱いに関して、今後、当審議会で検討を行う」の記述があります。
心情としては何か目安がほしいところではあるけどね…。
また、
- 長期間にわたり評価範囲外としてきた特定の事業拠点や業務プロセスがある場合には、それを評価範囲に含めることの必要性の有無を考慮する
- 評価範囲外の事業拠点又は業務プロセスにおいて開示すべき重要な不備が識別された場合には、当該事業拠点又は業務プロセスについては、少なくとも当該開示すべき重要な不備が識別された時点を含む会計期間の評価範囲に含める
ことも明示されています。
さらに、財務報告への影響を勘案して個別に評価対象に追加すべき業務プロセスについても、具体的な留意点が追加されています。
業務プロセスにおいて虚偽記載が発生するリスクを発生・変化させる状況の例として、
・規制環境や経営環境の変化による競争力の変化
・新規雇用者
・情報システムの重要な変更
・事業の大幅で急速な拡大
・生産プロセス及び情報システムへの新技術の導入
・新たなビジネスモデルや新規事業の採用又は新製品の販売開始 など
が挙げられています。
② ITを利用している内部統制の評価に関する留意点を明示
ITを利用している内部統制の評価に関して、一定の複数会計期間内に一度の頻度で実施することは、引き続き認められます。
ただし、この取扱いについては、IT環境の変化を踏まえて慎重に判断し、必要に応じて監査人と協議して行うべきであり、特定の年数を機械的に適用すべきものではないことが明示されています。
③ 内部統制報告書の記載事項の明示・追加
上記の改正を踏まえて、内部統制報告書の記載事項も改正されています。
「内部統制の評価の範囲」については、
- 重要な事業拠点の選定において利用した指標とその一定割合
- 評価対象とする業務プロセスの識別において企業の事業目的に大きく関わるものとして選定した勘定科目
- 個別に評価対象に追加した事業拠点及び業務プロセス
を、決定の判断事由を含めて記載することが適切とされています。
また、前年度に開示すべき重要な不備を報告した場合には、翌年度の内部統制報告書において、当該
開示すべき重要な不備に対する是正状況を付記事項とする必要があります。
要するに、それぞれの状況に応じて、財務報告の信頼性に及ぼす影響の重要性をよ~く考えて、内部統制の評価範囲を決定するってことだね。
考えすぎで、社長の髪も減りそうだ。