IFRS18で定義された「営業利益」~日本基準の「営業利益」と何が違う?
2024年4月にIFRS18 「財務諸表における表示及び開示」が公表されています。
IFRS18では、損益計算書に「営業区分」・「投資区分」・「財務区分」を設けて区分表示することが新たに求められます。
この区分を踏まえ、新たに「営業利益(Operating profit)」・「財務及び法人所得税前利益(Profit before financing and income taxes」という小計(すなわち段階利益)の表示も新たに求められるようになります。
これまで、IFRSは純損益の表示は要求するものの、具体的な小計(段階利益)の表示は要求していませんでした。
IFRSは「原則主義」の考え方だから、どんな段階利益を表示するかについて、細かく統一することはしていなかったんだね。
しかし、段階利益の表示やその計算方法にバラつきがあり、財務情報の分析や企業間比較を行いにくいという問題点がありました。
営業・投資・財務という区分の導入と、それを前提とした段階損益の表示を要求することで、こうした問題点への対応が図られています。
日本基準では、以前から「営業利益」を表示する方法を採っていますが、日本基準の「営業利益」とIFRSで新たに求められる「営業利益」の意味合いは異なります。
その理由は、「営業」区分の定義にあります。
IFRS18で求められる「営業」区分は、「投資」・「財務」(+「法人所得税」「非継続事業」)の区分に分類されないすべての収益と費用で構成するとされています。
IFRS18 Project Summaryには、「営業」区分に含まれる項目について、”regardless of whether they are volatile or unusual in some way”(何らかの点でその項目が不安定であるか異常であるかについては関係ない)との記述があります。
つまり、日本基準では「特別利益」「特別損失」として扱い、営業利益の算定に含めないような項目でも、IFRSでは営業利益の算定に含める場合があると考えられます。
上に示した【損益計算書のイメージ】で、「のれんの減損損失」が「営業」区分に含まれるのはそのためです。
営業利益の算定方法に関する違いは、利益というものの捉え方の違いから生じるものかもしれません。
日本基準では、売上高を出発点とし、「本業の費用を引く」→「本業以外の損益を加減」⇒「特別な損益は最後に加減」⇒「残りが利益」という発想です。
これに対して、IFRSは、利益がどのような要因・源泉から生み出されているのかを区分けして捉えたいという発想が強いように見受けられます。
たとえば下の図形の青い部分の面積を求めたいとき、どっちのアプローチで求めるか、という違いに似ているね。
IFRS18は、2027年1月1日以降開始する事業年度から適用されます(早期適用可)。