「交際費等」の範囲から除ける1万円以下の飲食費 ~飲食店が免税事業者の場合の判定は?
法人税法上、「交際費等」の額は、原則としてその全額を損金不算入とする考え方が採られています(法人の規模に応じ、条件内での損金算入が認められますが、あくまでも特例措置の位置付けです)。
ただし、社外の関係者と飲食等をした際の支出については、一人当たりの支出額が1万円以下であり、一定の事項を記載した書類が保存されている場合には、「交際費等」の範囲から除くことができます。
以前は、この判定基準は一人当たり5千円だったけれど、令和6年度の税制改正で、一人当たり1万円に引き上げられたんだよね。
この「(一人当たり)1万円以下か否か」の判定は、自社が税込経理を採用する場合は税込金額、税抜経理を採用する場合は税抜金額で行います。
消費税の処理は、「収益認識に関する会計基準」を適用する企業なら税抜経理しか認められず(同基準47項・212項)、「中小企業の会計に関する指針」でも税抜経理が原則とされているため(同指針61項)、ごく小規模な企業を除けば、当該判定は税抜ベースで行うことが想定されます。
この点、飲食をした店がインボイス発行事業者なら、シンプルに税抜ベースで判定すればよいものの、飲食店がインボイス発行事業者でない(=免税事業者等である)場合、話がややこしくなります。
免税事業者等である飲食店からもらった領収書に消費税相当額が記載されていたとしても、1万円以下か否かの判定は、消費税相当額を本体価格に含めて行う必要があります。
つまり、飲食店が免税事業者の場合は、消費税相当額も含めた総額ベースで判定するってことだね。
ただし、令和11年9月30日まではインボイス制度の経過措置期間です。
経過措置期間中は、免税事業者等からの課税仕入でも、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できるものとされています。
期間 | 割合 |
---|---|
令和5年10月1日~令和8年9月30日 | 仕入税額相当額の80%を控除できる |
令和8年10月1日~令和11年9月30日 | 仕入税額相当額の50%を控除できる |
したがって、令和8年9月30日までの80%控除期間中なら、1万円以下か否かを判定する際に本体価格に含めるべきなのは、仕入税額相当額の20%部分(控除できない部分)だけとなります。
【免税事業者等である飲食店で接待飲食をした場合の「1万円以下か否か」の判定】
期間 | 判定基準 |
---|---|
令和5年10月1日~令和8年9月30日 | 「税抜相当額+消費税相当額×20%」で判定 |
令和8年10月1日~令和11年9月30日 | 「税抜相当額+消費税相当額×50%」で判定 |
令和11年10月1日~ | 「税抜相当額+消費税相当額」(=総額)で判定 |
【免税事業者等である飲食店で接待飲食をした場合の「1万円以下か否か」のボーダー金額】
期間 | ボーダー金額(消費税相当額も含む総額) | 税抜相当額 | 控除できない部分 |
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令和5年10月1日 ~令和8年9月30日 | 10,785円 | (10,785÷1.1≒)9,804円 | (9,804×10%×20%≒)196円 |
令和8年10月1日 ~令和11年9月30日 | 10,477円 | (10,477÷1.1≒)9,524円 | (9,524×10%×50%≒)476円 |
令和11年10月1日~ | 10,000円 | (10,000÷1.1≒)9,090円 | (9,090×10%×100%≒)910円 |
飲食店が免税事業者等だった場合、令和11年10月1日以降は総額1万円がボーダーとなるもの、経過措置の間はそれよりもわずかに上の額をボーダーとして判定できるということになります。
細かい!
面倒な判定はいつも経理部任せなんだよな~。
経理部では接待飲食する機会がほとんどないのに、不公平だぞ!