金融商品会計基準等の2026年改正―SPCへの金融資産譲渡と子会社判定

金融資産の消滅認識

2026年6月2日、ASBJより、改正企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」等が公表されました。

今回の改正は、金融資産の流動化に関連して、一定の要件を満たす特別目的会社に金融資産を譲渡した場合の会計上の取扱いを明確化するものです。改正の中心は、その金融資産の消滅を認識できるか(オフバランス処理できるか)という論点です。

金融商品会計基準第9項(2)では、金融資産の消滅認識の要件のひとつとして、次の要件が定められています。

譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること

従来、譲受人が特別目的会社である場合には、特別目的会社が発行する「証券の保有者」を金融資産の譲受人とみなして、この要件を判定する扱いとなっていました(金融商品会計基準(注4))。

この点、「証券の保有者」が、SPCが発行する証券等を保有する「投資者」だけを指すのか、SPCに貸付けを行う「融資者」も含むのかが不明確でした。今回の改正では、特別目的会社に対して貸付けを行う「融資者」もその範囲に含めることが明確化されました。

某社経理部長

従前の規定では、「融資者」の取扱いが明確にされていなかったから、SPCが借入金で資金調達している場合には、金融資産のオフバランス処理ができない可能性があったんだね。

改正により、SPCが証券を発行して資金調達している場合と、借入金で資金調達している場合とで、金融資産のオフバランス処理ができるかどうかの判断が異なる可能性があるという点に関する実務上の懸念は解消されたものと考えられます。

改正後の金融商品会計基準第58-3項では、この取扱いの明確化に関して、
「譲渡された金融資産から生じるキャッシュ・フローを実質的に受け取ることができるかどうかという観点からの評価においては、特別目的会社が発行する証券を保有している投資者と特別目的会社に対して貸付けを行っている融資者とで異なる取扱いを設ける特段の理由はないと考えられる」
と説明されています。

なお、特別目的会社を用いた証券化において、譲渡人が、譲渡金融資産の全部又は一部について特別目的会社に対する投資者または融資者になる場合には、金融商品会計基準(注4)により、特別目的会社に対する投資者または融資者が譲受人とみなされます。
その結果、譲渡人自身が譲受人となるため、当該部分の譲渡はなかったものとされます。したがって、当該譲渡金融資産の全部又は一部は「残存部分」として取り扱い、金融資産の消滅の認識は行いません(金融商品実務指針第40項)。

特別目的会社は資産を譲渡した企業の子会社に該当するのか

上記の改正に伴い、あわせて企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」も改正されています。

連結会計基準の改正は、特別目的会社が、資産を譲渡した企業の子会社に該当するのかという論点に関係します。
連結会計基準では、「親会社」とは、他の企業の意思決定機関を支配している企業をいい、「子会社」とは、その親会社に支配されている企業をいいます(連結会計基準第7項)。親会社は、原則として、すべての子会社を連結の範囲に含めなければなりません(連結会計基準第13項)。

ただし、連結会計基準第7-2項では、一定の要件を満たす特別目的会社については、資産を譲渡した企業の子会社に該当しないものと推定する取扱いが定められています。ここでいう特別目的会社とは、資産流動化法上の特定目的会社や、事業内容の変更が制限されている同様の事業体をいいます。
この推定規定の対象となる特別目的会社については、主に次のような要件が定められています。
・資産を適正な価額で譲り受けていること
・譲り受けた資産から生じる収益を証券の所有者に享受させる目的で設立されていること
・その目的に従って事業が適切に遂行されていること

某社経理部長

要件を満たす特別目的会社は、資産を譲渡した企業から独立しているものとして、資産を譲渡した企業の子会社に該当しないと推定されるんだね。

資産流動化のために設けられる特別目的会社(流動化SPC)は、通常の事業会社のように幅広い事業活動を行う主体ではありません。譲り受けた資産から生じる収益を証券所有者等に享受させるための、限定的な「器」として設計されています。そのため、一定の要件を満たし、その目的に従って運営されている場合には、資産譲渡企業の子会社には該当しないものと推定されます。

証券所有者だけでなく融資者も含む

今回の連結会計基準の改正では、連結会計基準第7-2項における「証券の所有者」に、資産流動化法第2条第12項に規定する特定借入れに係る債権者も含まれることが明記されました。つまり、一定の特別目的会社について、資産を譲渡した企業の子会社に該当しないものと推定する取扱いにおいて、特別目的会社が発行する証券の所有者だけでなく、一定の融資者も含めて考えることが明確化されています。

某社経理部長

金融資産の消滅認識だけでなく、特別目的会社を資産譲渡企業の子会社に該当しないものと推定する場面でも、融資者を含める形にそろえたということか。

当該改正は、連結会計基準において、特別目的会社が資産譲渡企業の子会社に該当するかどうかを評価する際にも、特別目的会社に対する投資者と融資者を同様に取扱うこととし、金融商品会計基準の改正との平仄をとったものと解されます。

某社経理部長

ひとつの会計基準を改正すると、関連する基準も見直しが必要になることがあるんだね。
社内規程を変えたら、関連するマニュアルまで直す羽目になるのと同じか。お互い苦労しますなあ。