抱合せ株式消滅差損益の連結上の取扱い

某社では2024年11月27日に適時開示を行い、「抱合せ株式消滅差益」の計上(特別利益の計上)により、連結業績予想を修正することを発表しています。

しかし、2025年2月4日になって、この連結上の「抱合せ株式消滅差益」を取り消すことを発表しました。

この会社で計上された「抱合せ株式消滅差益」は、連結対象としていた100%子会社を吸収合併した際に計上されたものです。

親会社が子会社を吸収合併する取引は、「共通支配下の取引」に相当します。
個別財務諸表上は、親会社が子会社から受け入れる資産・負債は、合併前に子会社で付されていた適正な帳簿価額により計上します。親会社が合併前に保有していた子会社株式(=抱合せ株式)の帳簿価額との差額は、「抱合せ株式消滅差損益」として処理します。

(借)諸資産 XXX(貸)諸負債 XXX
      子会社株式 XXX
   抱合せ株式消滅差益 XXX

この親会社が他にも連結子会社を有するなら、引き続き連結財務諸表は作成します。連結財務諸表においては、個別財務諸表で計上された上記の「抱合せ株式消滅差損益」は、過年度にすでに認識済みの損益です。したがって、連結財務諸表上は、利益剰余金と相殺消去する必要があります。

冒頭の訂正事例は、この連結財務諸表における「抱合せ株式消滅差益」の相殺消去を失念したものであるようです。

ちなみに、上記と異なり、非連結子会社であった子会社を吸収合併した場合の「抱合せ株式消滅差損益」に関する連結財務諸表上の取扱いについては、消去する実務と消去しない実務の2パターンが見られます。

この点は、2023年10月5日のブログ「非連結子会社吸収合併時の抱合せ株式消滅差損益」で解説しています。

某社経理部長

「抱合せ株式消滅差益」って、そもそも科目名が長すぎるし、直感でわかりにくいんだよ…。