「準拠性」に関するレビューって?

東京証券取引所は、四半期開示の「一本化」に向け、有識者による実務検討会を設置しました。

すでに開催された検討会の資料によれば、第1・第3四半期について、金融商品取引法に基づく四半期報告書と取引所規則に基づく四半期決算短信とが一本化された際には、四半期決算短信に対して監査人によるレビューを一律には義務付けない(任意でレビューを受ける)方針が提案されています。
ただし、会計不正が起こった場合などには、取引所規則により、四半期決算短信に対するレビューを一定期間義務付けるしくみが検討されているようです。

資料によると、これらのレビューは、『準拠性』に関するレビューが想定されています。
見直し後の四半期決算短信における財務報告の枠組みは、会計基準の内容のうち一定の省略を認めることが検討されているほか、適正表示を達成するための追加開示の明示的な規定は想定していないためです。
こうした財務報告の枠組みは、『準拠性の枠組み』と呼ばれています。

これに対し、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(JGAAP)やIFRSなどは、『適正表示の枠組み』に相当します。

『準拠性』は、多くの人にとって馴染みのない用語と考えられますが、実は今年の公認会計士試験(論文式)の監査論で出題されたばかりです。

適正性に関する意見も準拠性に関する意見も、監査人が監査意見の表明を行うにあたって、
・経営者が採用した会計方針が会計の基準に準拠し継続的に適用されているか
・経営者の会計方針の選択や適用方法が会計事象や取引の実態を適切に反映するものであるか
・財務諸表における表示が利用者に理解されるために適切であるか
について判断しなければならないことに変わりはありません。

両者の違いは、上記の「財務諸表における表示が適切であるかどうか」の判断にあたり、
準拠性に関する意見の場合は、財務諸表が表示のルールに準拠して必要な開示が行われているかどうかの評価のみを行う
・適正性に関する意見の場合は、表示のルールへの準拠性の評価に加え、財務諸表の利用者が財政状態や経営成績等を理解できるか否かの視点に立って、全体としての財務諸表が適切に表示されているか否かを俯瞰的に評価することが求められる
点にあります。

なお、ややこしいですが、適正性に関するレビューも準拠性に関するレビューも、レビューによって付与される保証水準には変わりはありません。

四半期開示の一本化が実現した暁には、四半期決算短信に対するレビュー報告書にも注目したいですね。

某社経理部長

ピンとこないな~。
ちなみに、レビューのお値段の水準にも変わりはないのでしょうか…。