四半期財務諸表における有価証券の減損処理

日本郵政㈱が2021年3月期第2四半期(2020年9月)の個別決算において、関係会社株式評価損 約3兆円(!)を計上すると発表しました。保有する㈱ゆうちょ銀行の株価が著しく下落したための減損処理による評価損です。
日本郵政㈱の場合、㈱ゆうちょ銀行は連結子会社なので連結決算上の影響はありませんが、 配当は個別決算に基づいて行うことから、巨額の評価損計上により今後の配当原資がどうなるのか、注目されています。

そこで今回は、四半期財務諸表における有価証券の減損処理についてまとめました。

四半期財務諸表における有価証券の減損処理としては、

  •  四半期切放法
  •  四半期洗替法

の選択適用が認められます。(原則として継続適用。)
四半期洗替法による場合、評価損は翌四半期会計期間の期首に戻し入れ、その後は、戻し入れた後の帳簿価額を基準に、時価等と比較して減損の要否を判断します。 つまり、四半期洗替法による場合、四半期末で減損処理を行っても、株価次第で年度末までに戻入れが発生する可能性があります。

【事例】㈱ホテルニューグランド
 2019年11月期第3四半期…投資有価証券評価損 40,485千円(減損処理による評価損)
 2019年11月期(通期)…投資有価証券評価損 ゼロ(株価回復により第3四半期の評価損は戻入れ)

日本郵政㈱も洗替法を採用しているので、年度末までに㈱ゆうちょ銀行の株価が上がった場合には、関係会社株式評価損の額が少なくなる可能性も考えられます。 仮に減損不要な水準まで株価が大きく回復すれば、評価損を全額戻し入れる可能性も絶対ないとは言えないわけです。
下半期の㈱ゆうちょ銀行の株価の動向が気になりますね。

なお、四半期財務諸表における固定資産の減損については、そもそも減損の存在が相当程度確実な場合に限って行われることなどから、年度末に減損損失を戻し入れることは認められません。

某社経理部長のコメント

うちの会社にも、できることなら戻し入れたい損失がたくさんあるぞ!