連結決算における退職給付の調整で起こりうる処理ミス

連結決算において、退職給付に係る未認識項目の調整というのはイメージしにくいこともあって、処理を間違ってしまうことがあります。
以前、適時開示で公表されたある会社の決算短信訂正事例でも、退職給付関連の科目で金額訂正がなされていました。次のとおりです(単位は百万円)。

退職給付に係る資産:訂正前385→訂正後189(196減少)
退職給付に係る負債:訂正前3,120→訂正後2,924(196減少)

退職給付に係る資産と退職給付に係る負債がいずれも同額減少しており、次のような修正仕訳が入ったことがわかります。

退職給付に係る負債196/退職給付に係る資産196

なぜ、この修正が必要になったのでしょうか。
当該適時開示の資料では詳細はわかりませんでしたので、有価証券報告書の関連個所を見ながら、原因を推測してみました。

まず、196という数値です。
これは連結包括利益計算書の注記に記載されている退職給付に係る調整額の当期発生額と同額だとわかりました(偶然である可能性は排除できません。)。連結決算では、退職給付の調整に係る典型的な処理として、未認識数理計算上の差異等を退職給付に係る負債に計上します。上記修正仕訳の借方196はその額と対応したものである可能性があります。
一方、修正仕訳の貸方である退職給付に係る資産は何かといえば、訂正前の残高385が単体決算の貸借対照表に計上されている前払年金費用の残高と一致することから、内容は前払年金費用とみて間違いなさそうです。上記修正仕訳の貸方は、その一部を減額しているということになります。

以上の推測が正しければですが、上記の修正の原因は、前払年金費用(退職給付に係る資産)と未認識項目(退職給付に係る負債)を両建て計上してしまったということではないかと読めます。通常、同じ退職給付制度に関して資産と負債が両建てにはならないので、これを相殺するという修正です。
単なる見落としと思われるミスですが、総資産の額が変わってくるので、訂正作業は大変だったと思われます。

某社経理部長のコメント

頭がこんがらがりそうだよな・・・。

これ、間違ってても、間違ってることがわからないかもしれんぞ。