実務指針が引っ越し ~移管指針公開草案「移管指針の適用(案)」が公表~

会計に関する実務指針の「引っ越し」が行われる見込みです。

かつて、日本における会計基準は企業会計審議会が公表し、実務上の取扱い等を示す実務指針等については日本公認会計士協会が公表する体制がとられていました。

しかし、2001年に国際会計基準委員会(IASC)が国際会計基準委員会財団(IASCF)と国際会計基準審議会(IASB)に改組された際、「加盟国の基準設定主体は民間団体でなければならない」とされたため、日本でも財務会計基準機構が新設され、会計基準設定主体が民間の企業会計基準委員会(ASBJ)に移されました。
これ以後、新しい会計基準、適用指針及び実務対応報告についてはいずれも企業会計基準委員会(ASBJ)が公表しています。

しかし、それ以前に日本公認会計士協会が公表した実務指針等は、包括的に企業会計基準委員会(ASBJ)に引き継ぐことはしていないため、日本公認会計士協会に残されたままになっている実務指針等も多く存在しています。

某社経理部長

ASBJのWebサイトで「金融商品会計に関する実務指針」をいくら探しても見つからなかったのはそういうわけか!

こうした経緯により、会計基準等の利用者の立場からは、各団体から公表された基準や実務指針等のすべてを見ないと全体像を把握できない点などが課題となっていました。

そこで、日本公認会計士協会が公表した実務指針等を企業会計基準委員会(ASBJ)に移管する方針が示され、2024年4月3日に移管指針公開草案「移管指針の適用(案)」が公表されています。

この公開草案によれば、実務への影響を最小限とするよう、

  • 基本的には文書単位でそのままの形で移管することを原則とする
  • 実務指針等の名称は変更しない
  • 各実務指針等における項番号を変更しない

ことなどが示されています。

某社経理部長

シンプルに引っ越すんだね。そういう引っ越しプランがあるよな。

なお、実務指針等には、
① 会計に関する指針のみを扱う実務指針等
② ①以外の実務指針等(「監査」に関する指針に「会計」に関連する記載が含まれているもの)
がありますが、今回の移管は、① 会計に関する指針のみを扱う実務指針等 が対象となっています。

②については、移管するにあたって、会計に関する内容と監査に関する内容を切り分ける必要があり、相当な時間がかかることが想定されます。
そのため、なかでも優先順位が高いと考えられる「継続企業」と「後発事象」に係る実務指針等について、移管の実行可能性について調査研究を行う方向性が示されています。

某社経理部長

会計と監査の2世帯住宅を切り離すようなイメージか。ややこしいことになりそうだな~。
引っ越しやら2世帯住宅やら、人生の縮図を見るようだね。