欠損填補時のその他資本剰余金の過大振替

何日か前に、ある会社の適時開示にて、臨時総会に付議する欠損填補の議案の訂正がなされていました。
処理の流れは、資本金と資本準備金を取り崩してその他資本剰余金とし、その他資本剰余金をその他利益剰余金の繰越利益剰余金に充当するというものです。その充当額が以下の原因により過大になっていました。

その会社の利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金(繰越利益剰余金)の2項目から構成されています。そして、その他利益剰余金(繰越利益剰余金)の残高はマイナスとなっていました。
その場合、その他資本剰余金からその他利益剰余金(繰越利益剰余金)に振り替えることができる上限は、利益剰余金全体(利益準備金+その他利益剰余金)で見た時のマイナス額(厳密にはその絶対値)です。つまり、プラス残高である利益準備金とマイナス残高であるその他利益剰余金(繰越利益剰余金)を相殺した額です。
ところが、訂正前の議案では、その他利益剰余金(繰越利益剰余金)のマイナス残高の額で振替えることになっていました。つまり、利益準備金の額だけ過大になっていたというわけです。当該過大額は資本剰余金と利益剰余金の混同とされ、会計基準違反ということになります。

実はこのミスは上記の事例に限ったことではなく、これまでも他社で繰り返し発生していることが知られています。2023年においても他社で同じ事例があります。

なぜこのミスが繰り返し発生するのかはわかりませんが、一つの理由としては、損益計算に影響がないので関心が低いということかもしれません。しかし、資本と利益の区別という企業会計の基本中の基本に関係する処理なので、実務でも意識すべき部分だと思います。

某社経理部長のコメント

関心が低いわけではないんだが、よくわかっている担当者が退職して交代したりすれば、見落とすリスクはあるな。終身雇用が過去のものとなった日本企業では、下が育つ前に上が辞めちゃうから、ノウハウが蓄積されてないように感じるね。