ステーブルコイン、会計上の性格は?
2023年5月31日に、企業会計基準委員会より「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」の公開草案が公表されています。
公開草案は、いわゆる”ステーブルコイン”のうち、改正「資金決済に関する法律(資金決済法)」において「電子決済手段」と定義されたものに関する会計処理と開示を示すものです。
ステーブルコインってなんだ??
ステーブルコインは、法定通貨やコモディティなどの価格と連動するように設計されている仮想通貨のことです。法定通貨などに紐付けされているため価格が安定しており、決済手段としても利用しやすいと考えられています。
例えば、テザー(USDT)は、米ドルに連動した法定通貨担保型のステーブルコインで、1USDT=1ドルとなるように設計されています。
スイスの都市ルガーノでは、USDTが事実上の法定通貨の一つとして採用されています。
金を担保に紙幣の価値を保証する、昔の「金本位制」みたいな発想か~。
2022年に資金決済法が改正され、ステーブルコインのうち、「法定通貨の価値と連動した価格で発行され券面額と同額で払戻しを約するもの及びこれに準ずる性質を有するもの」が新たに「電子決済手段」と定義されました。
公開草案では、「電子決済手段」は、会計上は通貨や要求払預金に類似した性格を有する資産であるとして、次のような会計処理が提案されています。(※資金決済法第2条第5項に規定される電子決済手段のうち、第1号~第3号電子決済手段が対象)
- 取得時:受渡日に券面額に基づく価額をもって資産計上する
(取得価額と券面額に基づく価額との間に差額がある場合、差額は損益処理) - 期末日の処理:券面額に基づく価額をもって貸借対照表価額とする
(外貨建電子決済手段の期末時円換算は、外貨建通貨に準ずる)
また、上記の電子決済手段は、連結キャッシュ・フロー計算書上「現金」に含めることが提案されています(「『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準』の一部改正(案)」による)。
ちなみに、金本位制は1816年にイギリスで始まったものです。当時の人々は、200年後にこんな「おカネ」が登場し、その会計処理に人々が頭を悩ませることなど、想像もしなかったでしょう。